Japanese
English
講座 脳科学の進歩とリハビリテーション・3
脊髄損傷後の運動機能回復の脳内機構
Brain compensatory mechanism after spinal cord injury.
西村 幸男
1,2,3,4
,
伊佐 正
1,2,5
Yukio Nishimura
1,2,3,4
,
Tadashi Isa
1,2,5
1自然科学研究機構生理学研究所発達生理学研究系認知行動発達機構研究部門
2科学技術振興機構(JST)・戦略的創造研究推進事業(CREST)
3現ワシントン大学・生理学・生物物理学
4ワシントン国立霊長類研究センター
5総合研究大学院大学・生命科学研究科
1Department of Developmental Physiology, Division of Behavioral Development, National Institute for Physiological Sciences, National Institute of Natural Sciences
2The Core Research for the Evolutionary Science and Technology(CREST), Japan Science and Technology Agency(JST)
5Department of Physiological Sciences, Graduate University for Advanced Studies
キーワード:
皮質脊髄路
,
精密把持運動
Keyword:
皮質脊髄路
,
精密把持運動
pp.1069-1077
発行日 2008年11月10日
Published Date 2008/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101378
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
脊髄損傷,脳卒中などの中枢神経損傷後に,訓練によって一時的に低下した運動機能が回復することが経験的によく知られている.このような機能回復訓練の効果を正しく評価し,より効果的な訓練方法を開発するためには,機能回復のメカニズムを知る必要がある.
ヒトを対象とする研究では,対照群をおくことは困難である.さらに,損傷部位や損傷後の経過,治療の過程が患者ごとに異なること,損傷前の行動データがないこと,薬物の投与や損傷の追加などの侵襲を伴う実験的処置が不可能であることから,機能回復の神経メカニズムについて科学的な検証を行うことは困難である.そのため,ヒトに近い身体と脳神経系の構造を有するマカクザルをモデルとして用いる実験的研究は大変重要である1).近年,筆者らは,マカクザルを用いて頸髄レベルで皮質脊髄路を選択的に損傷し,指の巧緻運動が回復する動物モデルを作成し,脊髄損傷後の手指の器用さの回復を支えている神経メカニズムについて研究を行っている.本稿では,頸髄レベルでの脊髄損傷後の手指の器用さの再獲得に貢献する脳内メカニズムについて考察する.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.