Japanese
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特集 運動制御の神経生理・機能解剖update—大脳,小脳,脊髄の連関
損傷脊髄の機能回復における運動野からの間接経路の関与
Contribution of the Indirect Cortico-motoneuronal Pathways for Functional Recovery after the Spinal Cord Injury
伊佐 正
1,2,3
,
三橋 賢大
1
,
山口 玲欧奈
2
Tadashi ISA
1,2,3
,
Masahiro MITSUHASHI
1
,
Reona YAMAGUCHI
2
1京都大学大学院医学研究科高次脳科学講座神経生物学
2京都大学高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi)
3京都大学大学院医学研究科脳機能総合研究センター
1Department of Neuroscience, Graduate School of Medicine, Kyoto University
キーワード:
脊髄損傷
,
spinal cord injury
,
皮質脊髄路
,
corticospinal tract
,
間接系運動下行路
,
indirect motor pathways
Keyword:
脊髄損傷
,
spinal cord injury
,
皮質脊髄路
,
corticospinal tract
,
間接系運動下行路
,
indirect motor pathways
pp.425-431
発行日 2022年11月28日
Published Date 2022/11/28
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002201871
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はじめに
ヒトやマカクザルなどの霊長類において,皮質脊髄路の一部は一次運動野から脊髄運動ニューロンに単シナプス性に結合する.一方で,ネコやげっ歯類においては皮質脊髄路から運動ニューロンへの単シナプス性結合はなく,脊髄内の介在ニューロンを介して運動ニューロンに投射されている.霊長類における単シナプス性の皮質脊髄路の存在は,上肢遠位筋においては母指の対立運動や手指の独立運動などに関わり,げっ歯類などと比較してより巧緻な手指運動を可能にしていると考えられている9).
頸髄損傷などでこの皮質脊髄路が障害された場合には障害側の上下肢に麻痺が生じるが,臨床においては損傷部位や範囲に応じて麻痺の程度やその後の回復予後はさまざまである.一方,マカクザルにおいて頸髄皮質脊髄路を限局的に損傷させた場合は,リハビリテーションによって手指の巧緻運動までもが良好に回復する.この機能回復においては,もともと主経路であった皮質脊髄路自体の神経再生・回路再編は限定的で,それ以外の運動下行路(脊髄間接経路)が大きく寄与していることが筆者らの研究によって明らかになってきている4,5,17).
本稿では,脊髄損傷などにより皮質脊髄路が障害された場合における,脊髄間接経路の機能回復への寄与について,主に霊長類を用いた損傷実験から得られた知見を解説する.
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