Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
キケロの『トゥスクルム荘対談集』―視覚障害者と聴覚障害者の擁護
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.198
発行日 2008年2月10日
Published Date 2008/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101187
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紀元前45年,キケロが61歳の時に書いた『トゥスクルム荘対談集』(『キケロ選集・第12巻』,木村健治・岩谷 智訳,岩波書店)では,視覚障害者や聴覚障害者の価値を擁護するような論説が展開されている.
まず視覚障害についてキケロは,学識のある人は「視覚が適用されなくとも,魂は多くのさまざまな仕方で喜びを見出すことができる」と指摘する.「賢者の思索は,探究のために必ずしも目を適用する必要はない」からである.またキケロは,「夜が幸福な生活を奪い取らないとすれば,どうして夜に似た昼が幸福な生活を奪い取ることがあろうか」として,視覚が重要な役割を果たさない夜でも人間はさまざまな喜びを見いだしうるのだから,視覚障害があっても幸福な夜同様の喜びを見いだすことができるはずだと語っている.
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