Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
『荘子』の障害受容―樗櫟の挿話
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.1422
発行日 2002年12月10日
Published Date 2002/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109967
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筆者は以前,『荘子』(森三樹三郎訳注,中公文庫)にはさまざまな障害者が描かれていて,一種の障害者文学としての趣を呈しているという論考を発表したことがあるが(日本医事新報,第3581号,49-52頁,1992年),『荘子』内篇の冒頭を飾る逍遙遊篇には,荘子の障害受容的な発想の原点とも呼ぶべき次のような逸話が語られている.
恵子が荘子に言った.「私の家に大木があるが,人はこれを樗とよんでいる.その太い幹は,こぶだらけで,墨縄のあてようがない.その小枝は曲がりくねって,規矩も役にたたない.だから,この木を道端に立てておいても,大工も振り向かぬ始末だ」(原文;吾に大樹有り,人之を樗と謂う.其の大本は擁腫にして,縄墨に中らず.其の小枝は巻曲にして,規矩に中らず.之を塗に立つるに,匠者も顧みず).
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