書評
笹沼澄子 編「発達期言語コミュニケーション障害の新しい視点と介入理論」
岩田 誠
1
1東京女子医科大学・神経内科学
pp.1331
発行日 2007年11月10日
Published Date 2007/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101109
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高次脳機能障害と異なる発達性障害を理解するために
本書の書評の依頼を受けていささか困惑した.私にとっては専門外の領域の物事を扱った書物であり,しかもタイトルから察するに,大変難解な内容であるような感じがしたからである.しかし,いざ本を手にして中を読み出すと,各章や,それを構成している各項の概要がそれぞれの冒頭に示されており,これを頼りにして読み進むと,意外に読みやすいことに気づいて,まずは安心した.
私自身は,これまで成人における失語,失読,失書といったような,一旦獲得した機能が脳病変によって失われたことに基づくさまざまな障害に接し,それらの障害をヒトの大脳における機能局在の原則に従って理解しようと試みる研究に従事してきた.そのような方法論を扱いなれた視点から眺めていると,本書で扱われているような発達性障害の病態を理解することはきわめて困難である.このことを自分自身で強く感じたのは,今からもう十数年前になろうか,本書でも取り上げられているWilliams症候群の患者に初めて出会った時であった.この特異な症候群の患者に図形の模写をしてもらった時,私はそれまで幾度となく経験してきた成人における視覚構成障害とは,根本的に違う何かを感じたのである.自分がそれまで金科玉条として信じていた大脳機能局在論では理解しがたい,何か不可思議なことが起こっているということに気づいたのである.その時が,私にとっての発達性高次脳機能障害への開眼元年であった.
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