巻頭言
「生き続ける脳」と向かい合う
石合 純夫
1
1札幌医科大学医学部リハビリテーション医学
pp.1295
発行日 2007年11月10日
Published Date 2007/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101103
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今年7月に,高次脳機能障害研究の先輩であり,また,シンポジストとして意見を交わしたこともあるT教授が急逝されました.先生は認知症症候学の大家である一方,患者さんとご家族を中心とした「脳とこころの医学」を目指しておられました.予定されていた学会や研究会など,先生の脳の中で練られた思いは,お体のご病気のために突然失われてしまいました.しかし,疾病や損傷が生じた脳は,何らかの機能を失いながらも生き続けています.しかも,その脳自体が喪失感を抱いていることが少なくありません.例えばアルツハイマー病であれば,新しい記憶の蓄積が難しくなり,やがて,人生経験を含む判断力,知識,そして,日々の手続き的な記憶も失われていきます.しかし,その変容のなかで,脳は生き,感じ続けています.T先生は精神神経科をご専門とされていましたが,リハビリテーションに携わるわれわれこそ,生き続ける脳を理解し,また,支援することを責務としなけければならないと思います.
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