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はじめに
筆者は,「切断者のリハビリテーション」をライフワークとして整形外科医としての道を選択した.当時わが国では切断者のリハビリテーションの専門家が不在であったため,国内での研修は不可能であり,1960年に米国UCLA(University of California, Los Angels)義肢教育科の門をたたき,開発されたばかりのPTB(patellar tendon bearing)下腿義足,木製四辺形ソケット大腿義足の製作実技を義肢装具士として学んだ.そしてその後,兵庫県下の身体障害者巡回移動相談を通じて,50年近く地域で生活されている多くの切断者から,病院や施設では分からない多くを学んできた.「切断者がわが師,地域がわが教科書」という言葉は今でも筆者の座右の銘であり,これが現在での筆者の地域リハビリテーションへの関りのルーツとなっている.
さて,2006年10月から補装具の支給サービスが,措置的なものから,契約に基づく利用者と事業者という対等の関係に変り,提供されるサービスが見直された.将来の介護保険の導入を意識したと思われる原則一割負担が導入され,一定所得以上の所帯については支給の対象からはずされることとなった.障害当事者にとって,また,義肢装具の業界にとっても大変厳しい現状にあり,現行のシステムのままで果たして良質な義肢支給サービスが継続でき得るのか,向上心の高い義肢装具士を育てることができるのか,問題は多い.日本義肢協会,日本義肢装具士協会,日本義肢装具学会などが一体化して建設的な意見をまとめ,厚生労働省との連携を密にして,義肢の価格システム,筋電義手などの支給サービスシステムなど,抜本的な改革に取り組むことが望まれる.
一方,近年の義肢の進歩は著しく,とくに,適合技術におけるソフトインサートなど製作材料の進歩とあいまって,PTB下腿義足からTSB(total surface bearing suction)下腿義足への動き,大腿四辺形ソケットから坐骨収納型ソケットへの流れ,そしてCAD-CAM(computer aided design and computer aided manufacturing)システムの普及などが注目される.上肢切断においては,前腕筋電義手が製作,適合技術,装着訓練,メインテナンスの進歩により,多くの切断者に受け入れられるようになっている.また,遊脚相,立脚相の制御機能をもつ多くの膝継ぎ手やQOL(quality of life)の向上を目指した足部の開発が進み,臨床の現場で選択処方に迷うのが常となっている.それらの詳細については他著1)にまとめているが,本稿ではそのなかでとくに注目すべき切断と義肢の課題や発展について報告する.
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