Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
切断者に対して装着される義肢,種々の疾患,障害に適応される装具は,リハビリテーション技術上きわめて重要な位置を占めている.これらの義肢装具は,その対象となる疾患の重度化にともない疾病,障害の身体的な特性を十分理解しうる解剖,生埋,人体運動学,臨床医学の基礎知識が製作技術に要求される.さらに電動装具,義手などを例にあげるまでもなく製作にあたっては材料工学,機械工学,電子工学などの工学的知識をもった高度な製作技術者を必要とするにいたっている.このような医学,工学両面での関連を必要とする義肢装具を,患者,障害者の立場に立つサービス体系におき改善を図るために過去において多くの試みがなされた.
まず,医学会サイドでは日本リハビリテーション医学会義肢装具委員会(現リハビリテーション機器委員会)と日本整形外科学会の同委員会との協力のもとに,義肢装具に関する各方面でのシステム化がすすめられ,行政側において理解と具体的な対応がみられた.厚生省に身体障害者福祉審議会補装具小委員会,労働省に義肢装具検討委員会が設置され,義肢装具の周辺をめぐる問題が討議され,さらに通産省,科学技術庁などの協力を得て色々な具体的な改善がなされている.
まず,実態調査として昭和52年に全国6地区における1,394例の切断者の調査が行われ,昭和53年において全国10地区において1,100例の下肢装具装着者の調査が行われ,日本におけるこれらのプロフィールが初めて明らかにされた.ついで義肢装具のJIS用語作成,昭和53年より3年間にわたる義肢装具の価格体系の見直し,義足足部,膝継手を初めとする標準規格化,義肢装具支給サービスの体系化,医師に対する義肢装具の卒後研修カリキュラムなど,具体的な改善が徐々ではあるが,着実にすすめられてきた.
このような,各方面でのシステム化が具体化する中で,最も重要な課題とされながら,その実施の最も遅れたのが,実際の義肢装具の支給サービスの内容を左右する製作技術者の養成とその資格問題であった.いうまでもなく義肢装具士(prosthetist and orthotist)の役割は,義肢装具の製作工程において,医師,理学療法士,作業療法士,看護婦,ソーシャルワーカーなどの医療チームの一員として義肢装具の処方に参加し,患者や障害者の症状や社会復帰にもっとも適当な義肢装具を設計製作するとともに,直接組み立てにあたる義肢装具製作技能士(prosthetic and orthotic technician)を指導監督し,製作された義肢装具を患者に適合させることにある.
上述したように,医学的,工学的に高度の知識と,リハビリテーション・チームの一員としての基本的な教養が要求される義肢装具士は,その専門性を高め,職業として社会的にも経済的にも正当に評価されるためにも,一定の資格制度,免許制度が必要であることは,海外での歴史的背景をみるまでもなく明らかである.
すでに,義肢装具士の教育,資格問題についての経緯とあり方について報告しているが,その後の動向も含めて,もう一度内外での経緯をたどり現在への展望をのべてみたい.
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.