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はじめに
膝関節は歩行にとってきわめて重要なものである1).膝関節を失った大腿切断者は,その機能を機械的な膝継手に依存しなければならない.従来の膝継手を使用した大腿切断者では,その機械的な性能の限界のため健常者と比べて歩行速度は遅く,また歩行時エネルギー消費も大きかった2-4).近年のハイテクノロジーは,膝継手の制御にマイクロコンピュータを導入することに成功した.このことにより,大腿切断者は自分の好みの速度で,しかも快適に歩くことが理論的には可能となった.遊脚相を電子的に制御したものがインテリジェント膝継手(Intelligent Knee Prosthesis;IP)であり,遊脚相と立脚相の両方を電子的に制御しているのがC-Legである.
IPと従来の膝継手を比較検討した研究はいくつかみられる5-7).いずれもIPを使用することにより大腿切断者の歩行時エネルギー消費が減少したと報告している.また陳ら8)は,適切な訓練を受けた若いIP使用者では,健常者と同等の歩行速度におけるエネルギー消費はわずか22~25%大きいだけであったと報告している.さらにDattaら9)は,空圧安全膝継手(Pneumatic Swing Phase Control knee joint;PSPC)にすでに熟練した切断者に対してIPを使用させ,PSPCとIPにおける使用者の主観的評価を調査している.それによると,PSPCにすでに熟練した切断者であっても,全員がIPをより良いと評価し,IPへの変更を希望した.このように,IPは従来の膝継手に比べて優れたものであることが明らかとなってきた.
C-Legはその卓越した性能により,切断者の歩行能力の向上に対して,IP以上の効果が期待できる.しかし,C-LegはIPに比べて実用化してからの期間がまだ短く,C-Legの臨床的有用性についての報告はきわめて乏しい10).
今回われわれは,IPに熟練し,社会生活を行っている若い活動的な大腿切断者に対して,C-Legを使用する機会を得た.本研究の目的は,IPとC-Legの特性の違いが,歩行時エネルギー消費と歩行速度に及ぼす影響を検討することである.
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