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はじめに
近年,クリニカルパスの概念は一般に広く知られるようになり,実際に使用している施設も増加し,導入により入院期間の短縮につながったという報告が多い.しかし入院後の経時的な治療内容をあらかじめ計画し,同じ疾患に対してはどの患者に対しても原則的に同じ内容で治療を進めていくというクリニカルパスの考え方は,整形外科領域のリハビリテーションでは昔から一般的に行われていた.急性疾患や一部の内科慢性疾患のように必ずしも多くの患者が同じ経過をたどらないものと異なり,整形外科の手術では多くの患者に同じ治療計画を適用しやすいため,ある術式に対する基準となるリハビリテーションプログラムが手術解説書にも記載され1),それをもとに各施設で適宜変更したプログラムが使用されるのが一般的であった.当院でも基本的な整形外科疾患に対するリハビリテーションプログラムは20年以上前から作成され,プログラムに沿った計画的なリハビリテーションが行われていたが,最近のクリニカルパス導入の流れにより,リハビリテーションプログラムも各分野のスタッフの意見を取り入れて,随時見直しを行うという新たな運用の仕方が求められている.
無駄のない効率的な医療の提供というクリニカルパスの有用性2)は改めて説明するまでもないと思うが,2003年4月に全国の大学病院を中心に導入された包括医療制度のもとでは,最良の手術を行い,術後の安静期間を短縮し,早期に集中的なリハビリテーションを行い,入院期間の短縮を図ることが以前にも増して重要になった.慢性疾患に対して手術が行われる場合は予定入院となるので,外来で可能な検査はすべて済ませ,入院後はすぐに手術を行い,術後血液検査,X線検査なども,必要最小限とする必要があり,計画的に重複しないように行われなければならない.従来は個々の医師が自分なりの方法で,落ちのないように工夫していたが,検査の予定を忘れやすい者など,個人差があり,また新人は診療の流れに慣れるために時間が必要であった.そのような問題を解決する手段としてクリニカルパスは有用で,その導入は必須と言えよう3).包括医療は今後一般病院へも拡大されていく可能性が高く,その是非はさておき,いずれの医療施設でも無駄のない効率的な医療の実現は急務である.
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