巻頭言
マニュアル医療とオーダーメイド医療
関 和則
1
1東北大学大学院医学系研究科運動機能再建学分野
pp.811
発行日 2004年9月10日
Published Date 2004/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100692
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2004年5月末から6月1日にかけて,東北大学病院は病院機能評価を受審した.多くの医療機関が機能評価を受け,いわばお墨付きをいただくことで医療の質保証に役立てようとする流れは,今日の厳しい医療環境における生き残り策の一つとしても当然の方向と言える.この機能評価においてはリハビリテーションが重点項目の一つであることから,われわれも大学病院のリハビリテーション診療を担う者として,それなりの準備を行うことになった.準備の中身の大半はいわゆるマニュアル整備である.
簡便で操作性のよいシステム,誤解を生まない仕組みとルール,常に一定の安全性と質を保証できるプログラム,これらを周知徹底し円滑な運用を図るためにマニュアルの存在が必須であることに異論はない.熟練の技や個人の意識に依存する医療では,確かにどこかで水は漏れる.しかし多くのマニュアルを整備していること自体が高く評価される事実に,何かしら違和感を覚えるのは私だけであろうか.自然科学にせよ社会科学にせよ,科学とはすべての事象を法則的に理解することだとすれば,実学の世界では法則がすでにマニュアルであるのかもしれない.医療を,法則としての医学や管理学の実践的な適用と仮定すれば,これをマニュアルが支配することは必然であろう.けれども私はマニュアルを叩き込まれながら医師になった覚えがない.マニュアルは使うもので,使われるものではない.
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