Derm.2021
オーダーメイド医療
小川 陽一
1
1山梨大学医学部皮膚科学講座
pp.90
発行日 2021年4月10日
Published Date 2021/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412206340
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ここ数年,bench to bedsideの勢いが加速してきていると感じる.われわれにとって身近なものとして2014年に承認された根治切除不能悪性黒色腫に対するBRAF V600変異検出コンパニオン診断薬が挙げられる.文科省は現在,オーダーメイド医療実現化プロジェクトを進めている.これは,約20万人のDNAや血清などをバイオバンクに集めて,SNP(single nucleotide polymorphism)と疾患,薬剤の効果や副作用などの関係を究明するプロジェクトであり,将来的には個人のSNPを調べることで疾患感受性や予後推測,治療薬剤選択がなされるようになると思われる.慶應義塾大学皮膚科出身で現在,National Institutes of Health(NIH)にてラボを運営している永尾先生は,各種治療抵抗性の致死的薬剤過敏症症候群患者の皮膚と末梢血細胞をsingle cell-RNA seqを用いて解析し,T細胞におけるJAK経路が異常活性化していることを突き止め,JAK阻害薬を投与することで患者を救命している(Nat Med 26:236, 2020).この仕事は新規テクニックを用いて患者の異常を同定し,治療・救命に至ったというepoch-makingな仕事であり,近い将来のオーダーメイド医療を体現している.一方で,single cell-RNA seqのような新規システムを自施設で保有できるラボは限られるため,今後ビッグラボと地方のスモールラボでの研究格差に拍車がかかるのではないかと懸念される.
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