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ついに世界に先駆けて国家的プロジェクトが始動した.それは文部科学省リーディングプロジェクト(個人の遺伝情報に応じた医療のプロジェクト),別名「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」である.これは東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターが中心となり,全国の協力機関より血液サンプルを収集し2008年までに30万人分の解析を予定する,という一大プロジェクトだ.具体的には,患者の同意後に採血し,血液中の遺伝子多型解析,発現情報解析,タンパク解析を行い,さらに国際ハプロタイプ計画への貢献が行われることとなる.対象皮膚疾患は「悪性腫瘍」「アトピー性皮膚炎」「薬疹(特に過敏性症候群)」「ケロイド」だ.私どもの施設は幸運にも協力機関に選定され,職員のなかからメディカルコーディネーターを選抜し,視聴覚教材を備えた特別室で協力患者への説明と同意を得るシステムを作った.他科領域での対象疾患は「糖尿病」「狭心症,心筋梗塞」「関節リウマチ」「花粉症」「骨粗鬆症」などあらゆる疾患を網羅している.
このプロジェクトは,薬の効果の発現の差,副作用の発現の差は,実は遺伝子が支配しているという知見に基づいている.日本の年間30兆円と言われる医療費のなかで,なんと5兆円が副作用対策に使用されているという事実より,医療コストの削減は現在において重要課題である.今までは画一的に化学療法を施行してきたが,これからは個々の患者に最適の薬剤を提供することが必要である,ということだ.例えば,悪性黒色腫の患者の DAV-Feron療法において,同日にスタートしても汎血球減少症のため1か月入院する人,発熱もなく10日で早々に退院する人など個体の反応は千差万別である.過敏性症候群をみると,同じ薬を服用しても薬疹を起こす人,起こさない人がいて,さらに人によってなぜHHV-6のような弱毒ウイルスを活性化させてしまうのかと,常々疑問に思っているがいまだ明確にされていない.加えてケロイドの発生も,もはや「体質」で片付けられない時代に来ている.
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