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はじめに
脳卒中はひとたび発症すると身体的,精神的な機能障害が生じ,日常生活や社会生活にも影響を及ぼすため,Quality of Life(QOL)の低下をきたしやすい.近年,臨床では患者中心のアウトカム評価として健康関連QOLが取り上げられるようになってきている.岡崎ら1)は,特にリハビリテーションの領域では患者の日常生活や社会復帰にも関わることが多いため,QOL評価の意義は大きいと述べている.
脳卒中患者のQOL評価に関する先行研究では,SF-362)やEuroQOL3)などの包括的尺度を用いているものが多い.包括的尺度は,一般的な健康状態の評価や精神状態の評価,健常者との比較をする際に優れている.一方で,一般に包括的尺度は疾患特異的尺度に比して情報量が少なく,感度も低いため,特定の疾患に対する特有の症状や医療介入効果の測定には疾患特異的尺度を用いることが多い4).脳卒中についても同様であり,岡崎らは包括的尺度には脳卒中特有の症状である言語機能や認知の項目が含まれていないため,脳卒中患者の評価としては検討すべきであると述べている1).しかし,脳卒中のQOL評価については,信頼性や妥当性が十分に検討された疾患特異的尺度を取り上げた報告が少ない.現状においては,脳卒中特有のQOL評価指標を確立していくために,疾患特異的尺度の開発と積極的な使用,多方面からの検討を行うことが重要と考える.
「Stroke Specific QOL Scale(SS-QOL)」は,Williamsら5,6)が開発した脳卒中の疾患特異的尺度である.SS-QOLには日常生活動作,日常応用動作に加えて,脳卒中特有の症状である言語や認知,視覚などの高次脳機能に関する項目が含まれている点が興味深い.Williamsらは予備実験ののちにSS-QOL Version2を作成し,その信頼性および妥当性を示すと同時に,感受性も高いと報告している.本邦では,折笠7,8)が一般病院の患者を対象に信頼性妥当性の検討を行っており,SS-QOLは計量心理学的性質が十分満たされていたと報告している.
われわれは今回,SS-QOL(Ver. 2)の日本語への翻訳を行った.また,これを用いてリハビリテーションを目的に介護老人保健施設を利用している慢性期脳卒中者の調査を行い,その信頼性と妥当性を検討したので報告する.
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