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はじめに
近代医学の進歩は新たな医療機器や治療法の開発によって,いろいろな領域に専門医を輩出すると共に多岐に渡る専門職をも生み出しながら,多くの病を克服してきた.今や移植治療,再生治療,遺伝子治療など非常に高度な治療法も可能となってきている.これらの結果,わが国は世界でも稀に見る超高齢社会を迎えることができた.しかし,一方で,急速な超高齢化は疾病構造の変化をもたらし,寝たきり老人の増加や老人医療費の高騰など,それまでの医療供給体制におけるミスマッチが顕在化し,経済の低迷化もあいまって,医療のあり方に多くの問題を抱えるようになってきた.
今まで,病院は医師が看護師その他のコメディカルに指示を与え「病気を治療する」場であれば良かった.そしてそこでは,来院した患者の“病気を治してやる”といった医師を中心としたパターナリズムが存在し,良質の医療技術を提供するための高度医療機器の導入や各科の病床数に関する議論は盛んに行われても,“病院としてどのような医療を提供していくのか”などといった管理・運営についての関心はほとんど払われてこなかったように思われる.
ところが昨今の医療を取り巻く急激な社会変化は,病院に対して「常に質の向上を目指しながら,短期間で効率の良い医療を提供する」場へと自己変革するように迫ってきているのである.今や病院は,“自己完結型の医療を目指すのか,他の医療・福祉施設と連携しながら地域を支えていく場となるのか,あるいは急性期医療なのか,慢性期医療を提供するのか”など明確な選択を求められている.まさに変革期である.病院は今までのような“個々の医師が行う日常的診療の集約された結果として何となく成り立っている”といったオマカセ運営では,最早これらの変革を乗り越え,さらなる発展を実現していくことはできないであろう.種々の面で,第三者機関による評価に耐えられるような機能を兼ね備え,明確な方向性を持った運営が求められている.
本稿では,日本医療機能評価機構で取り上げられている第1領域(病院組織の運営と地域における役割)(表1)のなかで,「管理・運営面の機能評価」に関する項目について,病院組織のあり方を検討しながら述べることにする.
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