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はじめに
高齢社会に突入した現在,転倒とそれに続発する骨折や寝たきりなどの障害が大きな社会問題となっている.転倒予防の重要性に対する認識は徐々に高まりをみせ,社会保障審議会介護保険部会の報告によれば,介護予防に関する事業のうち,「転倒・骨折予防教室」としての取り組みが,平成13年度には全国921市町村で実施されたのに対し,平成14年度には1,532市町村(全体の47.3%)に増加している.
転倒は,人が二足での直立位を保てなくなった時に発生する.一口にバランスを保って立っていると言っても,そこには知覚・運動系の複雑な機構が働いているので,バランス障害が存在する場合には多様な要因が関わっている可能性があり,その原因を一見して判別することは不可能である.転倒しやすくなった主たる要因が疾病ではなく,加齢変化と考えられる場合には,従来の診察方法では異常が検出できない場合も多い.そこで,転倒しやすい人とそうでない人を判別するには,特別な評価方法が要求される1).易転倒性の有無をみる評価方法はいくつか提唱されているが,多くは被験者にさまざまな動作(パフォーマンス)を行わせて判定するものである.
これまで,転倒発生に関わりのある多くの危険因子が提唱され,転倒はそうした内的・外的危険因子の重なった末に起きる事象とみなされている2).内的因子のなかでも,特に身体機能(特に下肢機能)の衰えは,いずれの研究者も要因の一つとして挙げている.運動は内的因子に働きかけ,身体機能の向上を図ることができる点で,転倒予防プログラムの内容として理にかなっている.
本稿では,人がバランスを保つために備えている機構を概括したうえで,特に筆者らが東京厚生年金病院で開催している「転倒予防教室」において使用している身体機能評価法を中心にいくつかの評価方法を紹介し,転倒予防のための運動プログラムとその効果についても言及する.
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