名作ダイジェスト(2)
アンドレ・ジイド作—窄き門—力を盡して窄き門より入れ—ルカ傳
pp.59-64
発行日 1951年4月10日
Published Date 1951/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200074
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私がこゝに語ろうとする話は,この樣な生活を生きんがために全力を盡くし,そして私の精進がそれに傾けつくされたものなのだ。私はこの思い出を假令それが處々途切れていてもそれを整え補綴する爲の努力をしまい。何故かといへばこの樣な作爲はそれを物語ることによつてもう1度味はおうとする私の最後の興味さへも妨げる事になろうと思うからだ。
まだ12歳にもなつていなかつた時に父を失い,ル・アーブルの町から母と家庭教師との3人でパリに移り住んで居た私は,夏の初めの晴れ渡つた日がやつて來ると毎年叔父のビユコランの住んでいる,ルアー・ブルに近いフォングーズマールに行くのが常であつた。
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