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「格差」の拡大についての議論がここ数年来盛んである.国会でも取り上げられ,「格差」をテーマにした書籍や雑誌の記事も数多い.さらに「格差社会」は流行語ともなった.その論点は,「格差」は実際に拡大しているのか,拡大しているとしてそれは問題とすべきなのか,問題であるとしてその対策,施策はどうすべきか,などのようである.この議論には,多くの視点からさまざまな意見がだされており,小生のような門外漢が意見を述べるようなものではないのであろう.あえて勝手なことを述べさせてもらえば,第二次世界大戦によりそれまでの秩序が崩壊し,格差はもっとも小さいが大変貧しい時代から,高度経済成長などを経て,さまざまなシステムが築き上げられてきた.しかし,今やそれをそのまま維持できなくなってきているのである.昨今の議論で用いられている「格差」のニュアンスは,その状況のなかでまだ残っている既存のシステムのなかに居続けられる人,システムから脱落した人,システムに入っていけない人,そしてごく少数ではあるがシステムの外で成功した人に分かれていこうとしていることで,単純に資産や収入の差を取り上げているのではないようである.暗黙のものであれ,明文化されたものであれ,ルールが大きく変わった場合,そのシステムが大きければ大きいほど,長く続いていれば続いているほど,適応するには時間がかかる.そのはざまでは,多くの人間が犠牲を払わされるのであろう.
医療の世界においても,最近,次々に大幅なルール変更がなされている.臨床研修制度はその一つである.規制緩和による多くの研修病院の参入,研修医の一部の研修施設への集中,出張病院からの医師の引き上げなどが起こっている.今後の卒後の医師の進路がどのようになっていくかは不透明であるが,旧システムである医局講座制は,おそらく多くの大学で維持できなくなるであろう.また,病院における医師の確保はすでに緊要な課題となっている.2005年度の秋に行われた厚生労働省の前期研修医の進路希望調査によると,リハビリテーション科と答えた者は全国で15名であった.リハビリテーション専門医の需要からすれば大変少ない数字である.1人でも多くの医師がリハビリテーションの道を進んで欲しいと思うが,大学でみていても思うにまかせないのが現状である.
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