巻頭言
大学の格差を無くせよ
吉村 寿人
1
1京都府立医大生理学
pp.657-658
発行日 1962年10月15日
Published Date 1962/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201136
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科学の進歩にはそのバックグランドをなす研究態勢が整わないと研は進歩しない。政府に於ても近年科学技術の向上は国力発展の重要要素である事を認識し,科学技術振興の為の費用は昭和36年度に於いて総額277億円にも達し,昭和32年度の額を100とすれば36年度は160であつて,約6割方の増加である。併しこれを一般会計の歳出予算総額の伸び率に比較すると大体平行的であつて,特に科学振興に力を入れていると言う訳ではなく,一般歳出費に対する比率は1.4%に過ぎない。これを先進欧米諸国のそれに比較すると米国ではその比率が1961年度に於いて10.0%,英国は5.4%西独では2.5%,仏蘭西5.3%であつて,まだ日本のそれの方が劣つている。併し漸次に良くなりつつある事は確かである。併し乍ら私はここに為政者が余り気のつかない事で是非改善してもらい度い事を指摘したい。それは大学の格差をなくする事である。戦後,沢山の設備不充分の大学が出来た為に駅弁大学と言う不名誉な俗称迄出来たのであるが,これに対し出来の悪い大学は専門学校程度のものにしてしまえと言う意見があるやに聞いているが,私はこの意見はとらない。むしろ大学が沢山出来て,然もその設備が充実し,教授陣も立派になればこんな良い事はないのであつて,むしろ此等駅弁大学をみんな立派にする方向への努力を致す可きではないかと思う。これによつて日本には有能な若い研究者が沢山につくられるであろう。
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