Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ラッセルの『幸福論』―対人緊張の克服
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.582
発行日 2005年6月10日
Published Date 2005/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100124
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1930年に発表されたラッセルの『幸福論』(安藤貞雄訳,岩波文庫)には,対人恐怖症を思わせるラッセルの不安・緊張症状と,それに対する彼なりの対処法が示されている.
『幸福論』の第5章「疲れ」には,「悩みの原因になっている事柄がいかにつまらないかを悟ることで,ずいぶんたくさんの心配ごとを減らすことができる」として,ラッセル自身の経験が語られている.かつてラッセルは,講演をする際,「どこの聴衆もひどくこわかった」という.彼は「あがっているため,なんともまずいしゃべり方しかできなかった」し,「講演が終わると,神経の緊張でくたくたに疲れはてていた」.ラッセルは当時のことを振り返って,「私は,この厳しい試練をひどく恐れたので,いつも講演をする前に足の一本も折れてくれればいい,と思った」と語るのである.
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