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はじめに
近年,日本においても欧米諸国と同様に高齢下肢切断者が増加傾向にあり,下肢切断原因の60%以上が末梢循環障害で,切断時年齢も60歳以上が大部分を占めるという1).高齢切断者は,全身の動脈硬化による併存疾患を有し,心肺系のフィットネスが低下していることが多い2,3).さらに,大腿切断者の義足歩行に伴うエネルギー消費は大きい4,5).したがって,高齢大腿切断者にとっては,義足歩行自体が,身体に対して負担の大きい行為と言える.義足歩行時のエネルギーの軽減が図れれば,彼らにとっては大きな福音となるはずである.最近では,遊脚相をコンピュータで制御する機能を有するインテリジェント膝継手を使用することにより,エネルギー消費が軽減されるといった報告が散見される6).
何をもって高齢下肢切断者のリハビリテーションの成功とするか,ということについて,今までのところ一定した定義が存在しないという問題はあるものの9,10),諸家の報告では11-14),高齢下腿切断者のリハビリテーションの成功率は約70%と高いが,高齢大腿切断者では約50%と低い.このような背景から,高齢大腿切断者のリハビリテーションは困難であることは疑いのない事実である.したがって,臨床の現場では彼らに対する義足処方に難渋することも少なくない.高齢者切断者に対しては,高機能な遊脚相制御をもつ膝継手よりも,立脚相制御を重視した膝継手が選択されることが一般的であると思われる.
今回,高齢時に大腿切断を受け,従来の立脚相制御を重視した膝継手を使用し,日常生活を送っていた者に対して,膝継手をインテリジェント膝継手へ変更し,再訓練を行うことにより,歩行能力の向上を認めた.高齢であるにもかかわらず,彼の歩行能力が改善した要因について,文献的考察を加えて報告する.なお,高齢者を65歳以上と定義したうえで論旨を展開していく.
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