股関節離断者の義足歩行と車いす移動における酸素消費量の検討―60歳以上の切断者を対象に

Energy expenditure during both walking with prosthesis and locomotion with W/C in geriatric HD amputees.

要旨：本研究の目的は，60歳以上の股関節離断者の義足歩行時酸素消費量と車いす移動時酸素消費量の違いを明らかにすることである．入院のうえ，義足装着練習を施行して義足歩行を獲得した60歳以上の股関節離断者6例（年齢66.8±3.5歳）を対象とした．6例に対して，義足歩行時，車いす移動時の酸素消費量を，呼吸代謝計測装置を用いて測定した．義足歩行は，それぞれ通常使用する歩行補助具を使用して，快適歩行速度で5分間の平地歩行を行い，車いす移動は快適移動速度で5分間の平地駆動を行った．結果は，義足歩行時の酸素コストは0.667±0.163ml/min/kgであり，車いす移動時の酸素コスト0.175±0.048ml/min/kgより有意に大きかった（p＜0.05）．高齢股関節離断者にとって，義足歩行は車いす移動に比べて速度は遅く，酸素消費量も大きく，エネルギー効率の悪いものであることが実証された．