Close-up 運動制御
片麻痺歩行の多関節運動制御
森 公彦
1
,
中條 雄太
2
Kimihiko MORI
1
,
Yuta CHUJO
2
1関西医科大学リハビリテーション学部理学療法学科
2関西医科大学附属病院リハビリテーション科
キーワード:
片麻痺歩行
,
hemiparetic gait
,
推進力
,
propulsion force
,
モジュール
,
module
,
下肢装具
,
orthosis
Keyword:
片麻痺歩行
,
hemiparetic gait
,
推進力
,
propulsion force
,
モジュール
,
module
,
下肢装具
,
orthosis
pp.200-205
発行日 2023年2月15日
Published Date 2023/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551202946
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片麻痺歩行における多関節運動制御障害の視点
筋シナジー構造の理解は,片麻痺歩行の改善のための治療戦略に有益な情報を与える.筋シナジーとは,多数の筋の活動にみられる協調構造であり,いわゆる複数の筋の同時活動である.ヒトでは,1つの関節運動を実行するために無数の筋の組み合わせが存在し,筋と関節は一対一の関係ではない.しかし,すべての筋が独立して制御されているのではなく,冗長で複雑な筋骨格系を円滑に制御するために自由度を低減化していると考えられている.これが「筋シナジー仮説」である.
歩行時の筋活動におけるリズムとパターンを制御する脊髄神経ネットワークであるcentral pattern generator(CPG)は,筋活動パターンとその重みづけに基づいた筋シナジーの形成に重要な役割を果たす1).この筋シナジーの解析として,多チャンネル表面筋電図を用いて筋活動のパターンと歩行能力向上に必要な標的となる運動制御の問題を明確にする非負値行列因子分解(non-negative matrix factorization:NNMF)や主成分分析などの次元削減アルゴリズムにより,低次元の構造が抽出される.NNMFにより,ヒトの冗長で複雑な多関節運動を制御する筋シナジーが,計測された膨大な多数の筋活動データから複数の機能的単位(モジュール)として同定される2).
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