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はじめに
理学療法を実施するにあたり,対象者の全体像を捉えるとはどういうことか.理学療法に対する対象者からの問題提起は,怪我や疾病に伴う機能の低下,喪失,不全などから発起されるが,急性期,回復期,維持期,進行,寛解,誕生,終末などの時間経過と疾病の特性,対象者のディマンドやニーズ,家族,物理的環境や社会的環境など,対象者を取り巻くさまざまな要因により問題は多様化,変化する.したがって,対象者の全体像は一義的,一元的に決定されるものではないように思われる.
このような観点からすると,理学療法の問題となる対象は,何であろうか.理学療法は本来,治療的アプローチとして個体の機能の改善,回復を目的とするが,適応的アプローチとして課題や環境の調整を行うことも手段の1つである.人の運動行動は個体のもつ機能と課題,および環境との相互作用により発現するという概念から考える1)と,理学療法の対象は運動行動であると捉えることができる.運動行動は,運動・動作・行為の3つの側面から分析されるが2),それぞれを対象とする国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:ICF)モデルや疾病症候障害学に基づく関係性や因果性からの捉え方も必要となると思われる3,4).
本稿では,全体像を捉えるための理学療法を考えるうえで必要と思われる3つの視点,① ICFモデルに基づく問題抽出とアプローチ,② 疾病症候障害学における属性(因果性)と関係性から捉える問題抽出とアプローチ,③ 病期に関連する問題抽出とアプローチについて記述し,最後にバイオサイコソーシャルアプローチ(biopsychosocial approach)5〜7)および患者中心アプローチ(patient-centered approach)8)の観点から全体像を捉えることを考えてみることにする.
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