臨床実習サブノート どうする? 情報収集・評価・プログラム立案—複雑な病態や社会的背景の症例・2
慢性閉塞性肺疾患を合併した大腿骨頸部骨折術後患者
大場 みゆき
1
Miyuki Oba
1
1中通総合病院リハビリテーション部
pp.463-471
発行日 2018年5月15日
Published Date 2018/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201203
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はじめに
大腿骨頸部骨折は急性期,回復期の病期にわたり,学生が臨床実習において携わる機会が少なくありません.大腿骨頸部骨折の理学療法の目的は,受傷前の日常生活動作の再獲得です.各医療機関では独自のクリニカルパスが導入され,加速的なリハビリテーションが展開されるようになりました.しかし高齢者にはしばしば潜在的に何らかの併存疾患が存在し,理学療法に難渋する場合も少なくありません1,2).慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は発症要因である喫煙が胃腸の働きを悪化させ,カルシウムの吸収を妨げ,また呼吸困難による運動不足などが原因で骨粗鬆症を招きやすいとされています3).このため,COPDを合併している大腿骨頸部骨折は,頻度は低いものの臨床で経験することがあります.
COPDは気管支や肺胞の炎症性疾患であり,気流制限によって換気・ガス交換の障害が引き起こされ,低酸素血症や呼吸困難感を呈します.主訴は労作時の息切れで,階段昇降など負担を伴う日常的な動作が困難となり,症状が進行すると歩行や更衣,会話でも息切れが生じます.進行したCOPDであれば運動耐容能が低く,呼吸困難感を呈することから,大腿骨頸部骨折術後の理学療法においてはADL獲得の遅延を来すことも想定されます.そのためCOPDの病態を把握して理学療法を進めることが肝要となります.
本稿では,COPDを合併する大腿骨頸部骨折術後の患者を担当する際の情報収集,評価すべきことは何か,問題点,治療プログラムのポイントについて症例を提示し解説します.
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