Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
緒言
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)は世界で最も多くみられる疾患の一つである.しかしながら,日本におけるCOPDについては1984年時点で,Thomが国別で高齢者の死因としてのCOPDを比較しているが,欧米を中心とした31ヵ国中で日本は最も少ない結果となっている(100/100,000未満,最多はルーマニアで400/100,000以上)1).また,日本で肺の病気が欧米のように寝たきりと関連づけて討論されることは少なく,COPDは一般にはなじみの薄い病気であるというのが実態であろう.しかし,現在,COPDの診断率については疑問があり,日本におけるCOPDの位置づけの見直しが必要となってきているのも事実である.
社会全体の高齢化,女性の喫煙人口の増加がみられるわが国において,COPDは今後ますます大きな問題となってくることが予想されている.それに伴い,医療側に対しても延命のみならず,患者とその家族のQOL向上に向けた取り組みが期待されてきている.過去の医療はCOPDに限らず,疾患の克服,患者の延命が目的であるところのものが多く,その点においては多大な進歩を遂げてきた.その一方,患者やその家族のQOLの向上に関する検討は後回しにされていた感も否めない.しかし,1980年代の後半になってカナダのGuyatt,イギリスのJonesらが慢性肺疾患患者向けの健康関連QOLの質問票を作成し,以来世界各国の医療の場で急速にQOLの研究が進められてきている.新しい治療である非侵襲的陽圧人工換気(non-invasive positive pressure ventilation:NIPPV),肺容量切除術(lung volumereduction surgery:LVRS)は延命効果だけではなく,患者のQOL改善の一助になることが期待されている.
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.