ひろば
後期高齢者と称する老人の身になって再考すること
奈良 勲
1
Isao Nara
1
1金城大学
pp.177
発行日 2018年2月15日
Published Date 2018/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201125
- 有料閲覧
- 文献概要
「後期高齢者」とは,75歳以上の高齢者を指す用語であり,2013年時点の総務省の推計によると,全国に約1560万人いる.これは元々,人口学や老年学の学術専門用語で,75歳以上を「後期高齢者」,65歳から74歳までを「前期高齢者」と区別していたからであろう.しかし,高齢になれば複数の疾病に罹患しやすく,入院比率や長期療養比率が高まると自立生活を送ることが困難になる傾向がある.2006年に「高齢者の医療の確保に関する法律」(高齢者医療確保法)が成立し,2008年から75歳以上を切り離した独立の健康保険制度「後期高齢者医療制度」が発足した.だが,後期高齢者という名称には,「75歳以上を切り離すのは差別的」,「現代の姥(うば)捨て山」であるといった批判が強いこともあり,後期高齢者医療制度を「長寿医療制度」と呼称することもある.
後期高齢者医療制度は,各都道府県が設置する「後期高齢者医療広域連合」が保険者となり,財政的負担能力と地域の医療費の水準に応じて保険料の算定が行われるため,居住する都道府県と所得によって保険料が異なる.
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.