講座 ニューロモジュレーション・3
麻痺側上肢機能とニューロモジュレーション—ブレイン・マシン・インターフェースによる脳卒中片麻痺上肢の運動機能回復
牛場 潤一
1
Junichi Ushiba
1
1慶應義塾大学理工学部生命情報学科
キーワード:
可塑性
,
運動学習
,
リハビリテーション
Keyword:
可塑性
,
運動学習
,
リハビリテーション
pp.1026-1034
発行日 2017年11月15日
Published Date 2017/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201043
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はじめに
脳卒中片麻痺は一般に根治が難しく,生活制限,離職,介護負担,税負担に至るさまざまな次元で継続的な問題を誘引する1).脳卒中後に運動障害が残存する要因としては,損傷部位の生物学的修復が不完全であること,残存神経経路が十分に再組織化せず,代償経路が構築されないこと,学習性不使用などの二次的要因によってさらなる機能不全が進むことが挙げられる2).
これに対して近年では,神経科学分野において神経機能の可塑性や運動学習に関する基礎的な知見が蓄積され,代償経路の構築を高効率に誘導する治療手法の開発が可能になりつつある3).使用依存的可塑性,タイミング依存的可塑性,強化学習,誤差学習といった可塑性と運動学習にかかわる理論的枠組みは,脳卒中片麻痺をつくり出している中枢神経系の複数の異なる領域に対して適用可能であり,今後はこうした可塑性科学にもとづく神経治療の創出が期待される.
本稿ではパイロットスタディの一つとして,ブレイン・マシン・インターフェース(brain machine interface:BMI)による脳卒中片麻痺治療の試み4)を紹介する.
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