プログレス
脳卒中に対する再生医療
田口 明彦
1
Akihiko Taguchi
1
1先端医療振興財団再生医療研究部
pp.451-456
発行日 2017年5月15日
Published Date 2017/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200875
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はじめに
脳卒中は1951年より1980年まで日本人の死因のトップであったが,1960年代より普及した高血圧患者に対する降圧薬投与により,死亡者数の抑制に成功している.また血栓溶解療法が,米国では1996年より日本でも2005年より開始され,さらに近年では発症8時間以内の機械的血栓除去術が保険適用になり,脳梗塞発症直後の超急性期における神経細胞死の防止が可能となっている.しかし,脳梗塞超急性期における血栓溶解療法や機械的血栓除去術は,全脳卒中患者の10%未満の患者しか受けることができず,現在も増え続けている要介護/要支援患者の原因疾患の第一位は脳卒中である.そのため脳卒中を発症し脳神経組織が壊死した後に,神経機能の回復を促進する新しい治療法の開発が切望されている(図1)1).
本稿では,われわれが進めている脳卒中亜急性期における血管再生の促進を目的とする自己造血幹細胞移植の臨床試験について紹介するとともに,脳卒中急性期における過剰な炎症反応の制御を目的とする間葉系細胞移植および脳卒中慢性期における神経栄養因子の補充を目的とする神経幹細胞様細胞移植の臨床試験など,脳卒中患者に対する細胞治療の国内外での臨床知見について概説する.
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