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「再生医療が世界中で“まだ”大きな注目を浴びている.」
循環器の再生医療は血管再生を中心に日本人の貢献が非常に大きい.現在,特に注目されているのは,自家骨髄単核球をAMI患者PCI後に血行再建された冠動脈から注入し,心機能の改善を図るという倫理的に問題は少なく臨床家に理解されやすい血管再生医療が欧州を中心に多く実施されている.しかし,血管新生遺伝子治療で明らかになったことであるが,臨床試験デザインがその有効性の評価には最も重要である.すなわち,randomized, double-blinded, multi-center studyが結局はその有効性・安全性を決定する.再生医療に関する早期の安易なデザインの臨床試験は注目論文にはなりやすく学会に大きなセンセーションを引き起こすが,randomized, double-blinded研究により結局は否定され,最初に注目された科学者や臨床医学者による論文は消滅する.
AMIに対しては,骨髄単核球(BOOST-Trial, TOPCARE-AMI, REPAIR-AMI),末梢血由来培養内皮系細胞(TOPCARE-AMI, REPAIR-AMI),G-CSF動員後の末梢血単核球(MAGIC-Trial),G-CSF単独(STEMMI-Trial, FIRSTLINE-AMI)をPCI再疎通後(TIMI II/III)に冠動脈内投与する細胞・サイトカイン治療が実施されている.TOPCARE-AMIはCirculation誌の表紙にもなり,心ポンプ機能の改善をAMIのPCI後にもたらす夢の治療と世界中の循環器医の注目を浴びた.時期を同じくして,骨髄細胞が心筋細胞に豊富に分化するなどといった報告が相次ぎ,この細胞治療がAMIへの革命的治療としてセンセーションを引き起こした.しかし,この臨床研究はrandomizedもされておらず,当然,double-blindedもされていない.しかし,最近になり2つのrandomized, double-blinded研究が発表された.一つは効果なし(ベルギーグループ,2005年ACC発表),他は3%程度のEF改善であり(REPAIR-AMI,2005年AHA発表),いずれにしても,その煩雑さ,金銭的問題を考えれば,さらに大規模で実施される価値はなく,現在実施されているAMIへの標準治療として追加されるほどの効果は考えにくい.
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