増刊号 脳卒中の作業療法 最前線
第3章 支援技術Ⅱ 急性期から回復期の個別性を重視した介入(事例報告)
4 —上肢機能へのアプローチ⑦再生医療—再生医療と脳卒中の作業療法
大松 聡子
1
,
河島 則天
2
Satoko Ohmatsu
1
,
Noritaka Kawashima
2
1国立障害者リハビリテーションセンター病院 再生医療リハビリテーション室
2国立障害者リハビリテーションセンター研究所 運動機能系障害研究部神経筋機能障害研究室
pp.896-900
発行日 2021年7月20日
Published Date 2021/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202632
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はじめに
脳卒中や脊髄損傷等の中枢神経疾患によって生じる神経障害に対する治療法は,大きく3つに分類される1).1つめは,直接の障害発生に次ぐ二次的な損傷を防ぐための医学的処置であり,急性期脳梗塞に対するt-PA(tissue plasminogen activator:血栓溶解療法)投与や血管内治療等の再開通治療が該当する.2つめは損傷を免れた神経連絡を促進させる手法であり,リハによる機能改善はこれに該当する.3つめは損傷を受けた神経細胞や神軸索を修復させる治療法であり,神経細胞の成長因子促進,細胞移植による神経経路形成の促通,神経細胞の周辺環境の整備等の「再生医療」が該当する.再生医療研究は近年著しく発展しており,ヒトへの適用可能性が高い方法として,骨髄をはじめとする間葉系幹細胞,ES細胞(胚性幹細胞),iPS細胞(人工多能性幹細胞),Muse細胞の多能性幹細胞等が挙げられ,神経伝達の促進を企図した薬剤治療(リハビリテーション促進剤)等も含め,さまざまな再生医療技術がすでに臨床応用の段階に入っている.
筆者らが所属する国立障害者リハビリテーションセンターでは,2016年(平成28年)に再生医療リハビリテーション室を開設し,慢性期脊髄損傷症例を対象とした複数の再生治療実施に伴う身体機能への影響に関する臨床研究を進めている.本稿では,脳卒中後の神経修復メカニズムと再生医療のさまざまな手法のサーベイ結果を紹介するとともに,これまでわれわれが脊髄損傷症例を対象として取り組んできた経験を基に,再生医療がより現実的な選択肢となることを想定して,OTの今後の課題について述べる.
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