Japanese
English
症例報告
機械的咳介助(MI-E)を用いた呼吸理学療法により肺胸郭コンプライアンスが維持できた侵襲的陽圧換気療法—筋萎縮性側索硬化症の1例
An example of the amyotrophic lateral sclerosis with tracheostomy positive pressure ventilation therapy that pulmonary thorax compliance was able to maintain by chest physical therapy with mechanical insufflation-exsufflation
加藤 友記
1
,
丸山 昭彦
1
,
荒巻 晴道
1
,
齋藤 正雄
2
,
石井 恵子
2
,
大熊 彩
3
Tomoki Kato
1
1独立行政法人国立病院機構箱根病院神経筋・難病医療センターリハビリテーション科
2独立行政法人国立病院機構箱根病院神経筋・難病医療センター看護科
3独立行政法人国立病院機構箱根病院神経筋・難病医療センター神経内科
キーワード:
機械的咳介助
,
侵襲的陽圧換気療法
,
肺胸郭コンプライアンス
,
筋萎縮性側索硬化症
Keyword:
機械的咳介助
,
侵襲的陽圧換気療法
,
肺胸郭コンプライアンス
,
筋萎縮性側索硬化症
pp.700-703
発行日 2016年7月15日
Published Date 2016/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200613
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
要旨 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)で侵襲的陽圧換気療法(tracheostomy positive pressure ventilation:TPPV)を実施している患者に機械的咳介助(mechanical insufflation-exsufflation:MI-E)を用いた呼吸理学療法を実施したところ,肺胸郭コンプライアンスに変化を認めた.症例は60歳台女性のALS患者である.TPPV開始から6か月後に肺炎を発症したため,12週間にわたりMI-Eで排痰を促すとともに肺胸郭コンプライアンス変化を記録した.
呼吸理学療法の効果として,MI-E施行後に1回呼気量(tidal volume expiratory:Vte)と静肺コンプライアンス(static lung compliance:Cst)が有意に増加した(p<0.01).また,1回呼気量においては,前半6週(1〜6週)に比べ,後半(7〜12週)に有意に増加した(p<0.05).胸郭拡張差(difference of chest expansion:Dce)に変化はなかった.
12週間を通じてVteとCstに変化を認めたことから,MI-Eは排痰効果のみならず,肺胸郭コンプライアンスを維持・改善させる可能性が示唆された.本例では,MI-Eを用いた呼吸理学療法によって気道クリアランス確保と肺胸郭コンプライアンスが維持・改善し,肺炎や無気肺など肺合併症の発症リスクが減少したと推察する.今後,症例を重ねて検討していく必要がある.
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.