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はじめに
障害を持つ子供たちが地域社会でよりよく生活していくために,家族だけでなく福祉,教育などの「地域の力」による支えが充実していることは重要な条件である.特に近年の医学の進歩により気管切開や呼吸管理,経管栄養などが必要な,いわゆる在宅医療重症心身障害児が増加しており,子供とその家族を支える在宅支援サービスの重要性が高まっている.
本特集のテーマである「地域包括ケアシステム」という名称そのものは,今後ますます増加する75歳以上の後期高齢者の生活を支援するための仕組みとしてその構築が重要視されている政策課題である.その内容は,「高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで,可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるような包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指す」ものとされている1).具体的には,24時間365日体制の生活支援,医療・介護サービスの充実と連携強化,バリアフリー住宅の整備,地域包括支援センターを中心とした支援ネットワークの構築をめざすものと位置づけられている(図1).従来の在宅ケアとの違いとして,医療機関のサービスは患者や利用者に限定せず地域全体への貢献を考える必要があること,また介護や生活へのサービスとの連動がより重要視されることなどが挙げられる.この考え方は,地域リハビリテーションの本来の概念に近いものといえる.
障害児においても,地域包括ケアシステムに関連した支援・サービス提供を受ける機会は多いと思われるが,障害特性や教育・社会参加の場など高齢者とは異なる部分も多数あり,必要な支援・サービスやそれらを提供する機関のネットワークは小児独自のものといえよう.
本稿では高齢者の在宅支援との相違点,障害児支援体系の歴史的経緯などを踏まえつつ,横浜市の障害児ケアシステムについて紹介する.そのうえで,これからの「小児版・地域包括ケア」と,そこでの理学療法士の役割について考えてみたい.
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