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地域包括ケア病棟の目的と要件
日本の65歳以上の高齢者人口は,現在3000万人を超えており,2042年の約3900万人でピークを迎え,その後も75歳以上の人口割合は増加し続けることが予測されている.このような状況のなか,団塊の世代(約800万人)が75歳以上となる2025年以降は,国民の医療や介護の需要がさらに増加することが見込まれる.このため厚生労働省は,2025年をめどに,高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援を目的として,地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進している1).高齢者の介護という視点から生み出された「地域包括ケアシステム」における医療の役割は,地域のなかでいつまでも元気に暮らすためのツールの1つであり,できるだけ早期に的確な治療と支援を受けて退院することが望まれている.
2014年度の診療報酬改定で,亜急性期入院料を算定する病棟の機能を拡張する目的で地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料が創設された2).地域包括ケア病棟(以下,包括病棟)は当初,① 急性期医療からの受け入れ(ポストアキュート機能),② 緊急時の受け入れ(サブアキュート機能・入院以前より生活支援が多い患者),③ 周辺機能の大きく3つの受け入れ経路(機能)から開始した.③ の周辺機能は,(1)周辺機能・緊急時と(2)周辺機能・その他の2つに分けられる.(1)は入院以前に生活支援が少ない患者の受け入れであり,(2)は化学療法や短期滞在手術基本料3,糖尿病教育入院や医療必要度の高いレスパイト入院が含まれる.このように,包括病棟は実に多機能と柔軟性を有する病棟であり,地域包括ケア病棟協会は使い勝手のよさを活かす運営を提唱している3).「地域包括ケアシステム」を支える急性期と回復期の両機能を兼ね備えた懐の広い病棟と言える.
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