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はじめに
現在の医学的リハビリテーションを受ける制度は,脳卒中モデル1),すなわち一次的な増悪とその後の回復と機能障害の継続に基づいて形作られている.急性期,回復期,それに引き続いた療養型あるいは在宅リハビリテーションがその形である.患者は障害の回復に合わせて医療機関を移動しながら,次第に医学的なリハビリテーションからの離脱をめざす.しかし,増悪と寛解を繰り返し徐々に重度化していく例,回復がみられず医学的な処置が長期にわたって必要な例などはこのモデルの適用が難しく,医学的リハビリテーションの提供が長期間にわたることから問題化している.リハビリテーション難民問題は記憶に新しい.
一方,2012年度診療報酬改定以降,こうした非定型の障害モデルの受け皿となってきた標準的算定日数を超えた医療的リハビリテーションの必要性について,十分な評価と介護保険への移行への検討を求めるなど,医学的リハビリテーションの適用の日数制限を厳格化する方向で議論されている.こうした改定は漫然としたリハビリテーション治療を戒めるものであり,国のリハビリテーション諸団体へのヒアリングでも否定的に捉えられてはいない.しかし,リハビリテーション難民問題として社会問題化したことからもわかるように,このような標準的算定日数の厳格化は,国民にとってリハビリテーション治療への不安につながる重要な問題と考えられる2).
国民の不安を解消するためには,どのような障害像を持つ者が標準的算定日数を超えて医学的リハビリテーションが必要なのか,そして,その障害像はどれくらいの頻度で生じるのかをできる限り明らかにし,医療資源の分配の議論のなかで非定型の障害モデルの患者に対する,社会的な不安の払拭とのバランスをとっていく必要があると考えられる.
そこで,日本理学療法士協会では2012年度厚生労働省老人保健健康増進等国庫補助金事業として「長期的な医療介入が必要なリハビリテーション患者・利用者に対するリハビリテーションのあり方に関する調査研究事業」を実施した.この調査ではリハビリテーションサービスを提供している医療機関に対し,標準的算定日数を超えてリハビリテーションサービスの提供を行っているものを調査し,その類型化を行うことを目的とした.また,こうした病態に対する環境介入について考察した.
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