ひろば
刷り込まれた文化の功罪—障害・障害者という用語
奈良 勲
1
Isao Nara
1
1金城大学医療健康学部
pp.960
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200019
- 販売していません
- 文献概要
文化の重要な要素として言語が含まれる.それぞれの母国語は,生まれた当初からほとんど意味も文法もわからない状態で受動的に耳から刷り込まれる.つまり,人は,生まれた国・地域の環境と文化の多大な影響を受けるのである.狭い日本であっても当初は各地域の方言(訛り)が刷り込まれ,生涯を通じて個々人の地域で暮らし続けていれば,それは温存されたままである.しかし,近年,各地域の初等教育でも教師が共通用語で話すとか,テレビの普及のためか,良し悪しは別として子供たちの話しことばは,昔ほど典型的な方言ではない印象を受ける.地域文化の保存という観点からすれば,方言が温存されないことは喜ばしいことなのだろうか.
各分野の専門用語は,主に高等教育で学習されるが,それはそれぞれの分野の基盤となるものであり,その意味や概念を知ることなしに各分野の学問体系を修得することは不可能である.他の分野のことはわからないが,理学療法・リハビリテーション界,さらに行政,マスメディアなどにおいては,「訓練」,「障害」,「障害者」など,学術的とは思えない用語がいまだ頻繁に使用されている.私は,前者「訓練」についてはその概念が軍隊,テロリストなどを指揮する際に使用されており,上から目線でかつ命令的であることから,理学療法界では使用の自粛を促してきた.ちなみに,本誌では行政用語や文献を除き十数年前から「訓練」は使用されていない.
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.