2頁の知識
お酒の功罪
豊川 行平
1
1東京大学
pp.54-55
発行日 1957年12月15日
Published Date 1957/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910503
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酒は男性のたしなむものといわれたのは昔のこと,昨今では女性の間にもかなり酒のフアンがいるようだ。銀座あたりのビアホールでは5人に1人ぐらい女性が混つて,大いに気焔を挙げているのを見かける。余りいい図じやないと非難する男性もいるが,このうまい酒を男性だけが独占しようというのはとんでもないことだ。仕事に疲れたときの一杯はまことにうまいし,疲れがすつかりふつとんでしまう。
一杯の酒で明日の活動が促進されるのであるから,これを禁ずる必要がどこにあろう。それに,うれしいとぎにはそのうれしさを倍加させるのも酒であるし,かなしいときに,そのかなしさを忘れさせるのも酒である。酒は涙かため息か……という歌の文句ではないが,酒は心のうさをはらしてくれる。食前の一杯は食慾を増進させるし,眠れぬ夜には一種の睡眠剤としての役目を果してくれる。
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