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Key Questions
Q1:障害のある方が芸術文化活動を行う意義とは?
Q2:芸術文化活動と作業療法のかかわりとは?
Q3:これからの芸術文化活動とは?
本特集について
2016年(平成28年)9月,私に一本の相談の電話がかかってきた.「地震被害のあった熊本にお金を落としたいから,例年,九州の中央部で行っている九州ネットワークフォーラム(日本の福祉をよくするために若者がもっと頑張っていこうという研修・交流会.主催:FACE to FUKUSHI)を,今年は熊本で行いたい.しかし,どこの会場も被災していて使用できない.どこか使える会場に心当たりはないか」というものだった.私が勤務していた大学も被害を受けていたが,使用できる部屋があったので協力を申し出た.その縁で2017年2月に滋賀県で行われたネットワークフォーラムの全国大会に参加し,同時開催であった日本のアール・ブリュット註)の展示やイベントにも参加した.それは,私に課題を与えるものであった.
展示されていた作品は,症状や障害と思われる特徴がみられながらも,それが強みや魅力となりアートとして輝いていた.常識ではとらえきれない形,色や形の繰り返しが織りなす美,圧倒される細かさ,あるいは大胆さ,迫ってくるエネルギー等である.作品はアートとして大切に扱われ,障害者が社会の中で一人の表現者として尊重されていることが伝わってきた.私は「障害者が社会で生きる可能性を伸ばしているだろうか.障害者や作品をいまだに病院や福祉事業所の内に閉じ込めていないだろうか.リカバリーに携わっているだろうか」と自問した.障害者が社会に受け入れられることは,私たち作業療法士にとっても課題だと感じていたからである.私は単に,アール・ブリュットやエイブル・アートの世界に迎合したのではない.過去に芸術療法と作業療法がかかわりをもちつつも一定の距離を保ったように,この2つがこれからどのようにかかわっていくかを考えるときがきていると思ったのだ.
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