甃のうへ・第16回
海外経験のなかで自分の道を見出す
浅香 結実子
1
1東京北医療センターリハビリテーション室
pp.639
発行日 2014年7月15日
Published Date 2014/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106698
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海外に興味を持ったのは,高校生時代のタイへの交換留学がきっかけでした.そこで日本とは異なる文化に触れ,海外の魅力を実感し,一方で高校生ながらも車椅子もなく道路を這う障害を持った人を目の当たりにしました.その体験から「開発途上国の障害を持つ人が生活しやすくなるような仕事をしたい」と思うようになり,理学療法士の道に進みました.「開発途上国で働くために,まずは広い知識が必要」というアドバイスから,卒業後は総合病院への就職を決めました.指導熱心な先輩に支えられ,4年半の間に下肢切断,小児疾患,脳血管疾患など多くの臨床経験を積むことができました.そして,5年目から青年海外協力隊員として,大洋州にあるソロモン諸島の保健省Community Based Rehabilitation(CBR)課で,2年間隊員活動を経験しました.
人口約60万人の小さな島国での生活は,私にとって戸惑いと発見の連続でした.日本とは異なり障害を持つ人への社会保障はほとんどなく,車椅子や歩行補助具は不足し,運搬手段や現地スタッフを雇う予算も限られたなかでの活動でした.物理的,経済的に苦しい一方で家族間のつながりは強く,地域の人間関係はとても恵まれていました.私も同僚との関係に恵まれ,現地の女性理学療法士が子供を育てながらも,男性顔負けの働きをしていたことに感心し,心強く感じました.また,世界保健機関(WHO)のCBR担当者との交流や女性障害者の自助グループ活動,ピアグループトレーニングなど,私が日本で仕事をするだけでは得ることができないことを経験できました.
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