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はじめに
2000年4月の診療報酬改定によって「回復期リハビリテーション病棟」が新設されたことは,リハビリテーション(以下リハと略す)医療の独自性が医療制度のなかで初めて認められたことであり,リハ医学を専門とする身としては大変喜ばしいことである.特に今回の診療報酬改定で「急性期と慢性期との谷間におちこんで,リハ医療は消滅してしまうのではないか」という危機感が強かったなかで,これは大きな朗報であった.これによって,適切なリハを行わないままに退院や転院がなされてしまったために,本来発揮できるはずのADL能力が十分に発揮できずに寝たきりになったり,また本来自宅復帰できたはずの人ができなくなるようなことが回避されると期待される.
しかし一方で,これはリハ医療のこれまでの姿がそのまま認められたというものではなく,大きな脱皮を迫られていることを肝に命ずるべきである.万一,「回復期リハ病棟」が目的とする“寝たきり予防”や“自宅復帰促進”を実現できなかったり,リハの名のもとに社会的入院の隠れ蓑になったりしてしまえば,「回復期リハ病棟」の今後の発展はなく,またリハ医療全体にも大きくマイナスとなるであろう.したがってリハ医療界全体として,「回復期リハ病棟」のみでなくこれをより良いリハの発展のために,これまでの対応を再検討しそのあり方について考える好機としてとらえるべきと思う.
なお,前述した危険を避けるためにも,本特集の対談で厚生省の則安課長補佐が述べられているように,回復期リハ病棟のあるべき姿の方向づけとして,詳細なリハ総合実施計画書の使用が義務づけられている.また厚生省の指導のもとに「地域リハ懇談会」が開催され,回復期リハ病棟を中心として議論がなされた.筆者はこの会で回復期リハ病棟のあり方についての報告をさせていただき,それをもとにして報告書1)が作成され全国に配布された.また2001年2月には,自助努力として回復期リハ病棟連絡協議会が,その質的向上を最大の目標として発足するはこびとなっている.
本稿ではこれらをふまえて,「回復期リハ病棟」のあり方について,特に具体的対応のポイントをPTとの関連の深い点を中心に論じることとしたい.
なお,筆者自身はこれまでリハの現状について様々な見地からの再検討を行い,より良いリハプログラムの確立を目指して,プログラムによる効果の差についての検証を通して,「目標指向的リハプログラム」を体系化してきた.その具体的対応のポイントは表1に示しているが,PT・OTによる病棟ADL訓練3),「できるADL」と「しているADL」の明確な区別2)など,今回の「回復期リハ病棟」で重視されている考え方と基本的に同じであり,我々の経験を今後の回復期リハ病棟のあり方や具体的なすすめ方を考えるにあたって役立てていただけることも多いと思う.詳細については既論文2-38)等を参照いただきたい.
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