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はじめに
急性期治療後の機能能力が自然回復する時期に,その回復を最大限に促し,心身ともにより回復した状態で生活社会復帰を果たすことは,患者本人や家族はもちろん,地域,社会,医療財政にとってすべてに有益であることは明白であり,その環境を提供するために,多くの医療専門職がチームを組んで効率的かつ集中的にリハビリテーション(以下,リハ)を実施する病棟,回復期リハ病棟が2000年に誕生した.今や回復期リハ病棟は約1500病棟,65000床となっている.短期間でここまで成長した背景には,日本における人口構成や社会背景の変化から国が進めている医療介護制度の再編に,回復期リハ病棟の理念や目的が合致することと,回復期リハ病棟の日々の取り組みにより,理念や目標に結果が着実に得られてきたことがあると思われる.
「回復期リハ病棟の現状と課題に関する調査」から,診療報酬点数は上昇しているものの,発症〜入院までの平均日数,平均入院日数,平均日常生活活動(ADL)利得(Functional Independence Measure:FIM),平均自宅復帰率の推移は2006年以降横ばいになっていることがわかる.急激に病床数が増えてきたにもかかわらず全体としての指標が横ばいであるということは,今の制度が成熟しておりその制度のなかで診療を行えばある程度の結果を残すことができるという意味で非常に評価するべきだが,量的に整備されてきた現状では,さらなる質の向上が要求されることは明白である.「回復期リハの質」の向上を得るには,「個の質」と「関係の質」の向上が重要であると考える.その中でも特に回復期リハ病棟医の「個の質」と「関係の質」の向上が最大の鍵となると思われる.
約10年の脳神経外科医臨床経験を経てから回復期リハ病棟医を2年経験し,その後再度急性期脳神経外科医として地域に密着した臨床を行っていることと,昭和大学医歯薬保健医療学部ラグビー部監督であるという背景を踏まえ,「回復期リハ病棟医を経験した急性期脳神経外科医として回復期リハ病棟医にお願いしたいこと」「リハ科専門医ではない回復期リハ病棟医の経験で感じたリハ科専門医にお願いしたいこと」「医歯薬保健医療学部ラグビー部のチーム作りから考える回復期リハ病棟でのチーム作りへの提案」をしたうえで,回復期リハ病棟の医師のあり方について私見を述べる.
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