Case Presentations
長期臥床により嚥下障害を引き起こした患者の1例―うつ伏せ療法を試みて
広田 桂介
1
,
橋爪 伸幸
2
,
小田原 弘子
3
,
並河 正晃
4
Hirota Keisuke
1
1久留米大学リハビリテーションセンター
2医療法人親仁会米の山病院
3医療法人親仁会くろさき苑
4京都大学医療技術短期大学部
pp.45-48
発行日 2001年1月15日
Published Date 2001/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105725
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はじめに
現在我が国では,世界に類をみない高齢社会を迎え,それに伴う諸問題はますます深刻化している.特に,脳血管障害などが原因で寝たきり状態に陥った高齢者の増加は,社会的にも深刻な問題となっている.
このような状況のなか,寝たきりおよび寝たきりになる可能性が高く,廃用に伴う様々な症状を抱えている高齢者も少なくない.なかでも,嚥下障害を併発している患者は多く,これを原因とする肺炎は,高齢者の死亡率の大半を占めるといわれている.このような患者は筆者らの経験上,上頸部後屈位状態をとっていることが極めて多いように思われる.
今回,寝たきりによる廃用症候群として嚥下障害をきたした患者の頸部後屈位状態に着目し,従来どおり頸部の他動的関節可動域運動(ROMex)等の理学療法を実施したが,明確な改善傾向が認められなかったため,筆者の前任職場であるみさき病院(福岡県大牟田市)で開設当初より実践研究(厚生省長寿科学研究・大友班)を続けている「うつ伏せ療法」を用いたところ,嚥下障害のみならず種々の症状の改善がみられた.この症状を通し,老人医療における理学療法の必要性および重要性を実感したので,若干の考察を加えて報告する.
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