特集 認知障害
認知過程の障害と理学療法
吉尾 雅春
1
Yoshio Masaharu
1
1札幌医科大学保健医療学部理学療法学科
pp.559-563
発行日 1998年8月15日
Published Date 1998/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105104
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1.はじめに
近年,認知機能に視点をおいた理学療法が求められている.痴呆や失認のように高次脳機能としての認知機能に障害がある場合はもちろんのこと,環境との相互作用を図るなかで認知過程のどこかに問題を抱える場合も対象にしている.また,学習理論にはレスポンデントおよびオペラント条件づけを基礎とする連合学習以外に,認知学習という領域がある.理学療法場面は正に学習場面で行動変容を指向しており,そこでは認知学習理論が大きな背景にもなっている.
以上のことは,認知機能に視点をおいた理学療法の対象がすべて認知障害を持つということではないことを意味している.認知障害を伴わないような場合でも,認知心理学的な関わりを工夫しなければならない状況が多いということである.そして最近では,アフォーダンスという言葉に代表される生態学的認識論が注目されてきている.従来の認知科学とは趣を異にしたこの理論は,中枢神経系の理学療法でも既に応用されつつある.
特集のはじめにあたって,認知過程について改めて概説し,その過程の障害に対する認知心理学的なアプローチについて簡単に述べる.
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