特集 認知障害
運動の認知障害と理学療法
宮本 省三
1
Miyamoto Shozo
1
1高知医療学院理学療法学科
pp.564-570
発行日 1998年8月15日
Published Date 1998/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105105
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1.はじめに
運動の認知障害とは「感覚入力と運動出力とをインターフェイスするシステムの障害」と規定することができる.運動の認知障害とは,単なる感覚障害でもなければ運動障害でもない.現在の脳科学は,この複雑なシステムの解明に向けての研究を進めている1).さらに,患者の運動機能回復を実現するには,応用科学としての理学療法の特性を生かし,医学のみならず哲学や心理学をも含めた学際的な視点から身体運動の深淵を見つめてゆく必要性がある.
そこで本稿では,「空間には,視覚空間,聴覚空間,触覚空間などがあり,それらが合わさったものとして身体の空間性がある2)」という哲学上の命題を出発点にして,与えられた主題である「運動の認知障害と理学療法」の地平を眺めてみたい.
そのためにまず,ルネサンス以後の哲学と心理学における古典的な身体論のなかから,人間の「空間認知」に関連する記述を素描する.次に,身体を空間に意味を与える受容器として捉える視点を提示し,運動の認知障害について考察する.そして,最後に「認知運動療法」と呼ばれる治療法を紹介し,今後の理学療法の可能性を展望する.
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