特集 理学療法の展望
21世紀の理学療法―私はこう考える
生活の場へとつながる理学療法の展開
宮崎 哲哉
1
Miyazaki Tetsuya
1
1聖隷三方原病院リハビリテーション科
pp.900-901
発行日 1996年12月15日
Published Date 1996/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104932
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“とうとう病院に見捨てられちゃった.”車椅子レベルで,自宅退院の決まった脳卒中患者さんから,しばしば聞かされる言葉である.“退院してからが本当のリハビリの始まりなんですよ.頑張ってください.”そうはいうものの,入院生活のなかで,治療時間が一番重要な時間であるという患者さんにとっては,退院後の生活が不安でいっぱいなのも当然かもしれない.さらに自分自身も,不安を持たせながら患者さんを退院させてしまう状況に,これで良かったのだろうかと自責の念にかられるのである.
近年の一般病院における入院期間短縮の傾向,さらに理学療法対象疾患の拡大や治療以外の業務の増加から,十分な治療時聞を確保しにくいことも多い.また頭の中では病棟や屋外,さらには家族指導と併せ,退院前に自宅での訓練が行えれば,などと考えながらも,主たる治療の場は相変わらず理学療法室となってしまっているのが現状である.また,病院勤務の理学療法士が大多数を占めるわが国では,退院後の継続治療や生活指導が理学療法士によって行われる機会も非常に限られており,退院後しばらくして外来診療に訪れた患者さんをみて,予測に反した変化に愕然とすることも少なくないのである.
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