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はじめに
脳卒中片麻痺患者などにおいては,健側または患側の膝関節を伸展する膝伸展筋力が,立位保持や歩行の予後予測などに用いられることも多い1,2).膝伸展筋力は,単に膝関節を伸展する筋力であり,多くの場合,股関節,膝関節が屈曲位の椅坐位で測定されている3).しかし,立位保持や歩行中に必要とされる筋力は,股関節が中間位近傍,膝関節が伸展位近傍の筋力であり,膝伸展筋力の測定肢位とはいくぶん異なっている.
立位保持や歩行で必要な下肢筋力は,片側または両側の脚全体で全身の体重を支持する筋力と考えられる.脚全体の筋力とは,股関節,膝関節それに足関節を含む多関節,多数筋が関与する脚全体の粗大筋力を意味している.体重を支持するという観点に基づく脚全体の粗大筋力とは,脚全体で伸ばす方向で発揮される筋力(以下,脚伸展筋力)と推測される.
筆者らは,脚伸展筋力が立位保持や歩行など,脚全体で体重を支持するために必要な筋力であるという仮説に基づいて,等尺性・等速性の筋収縮様式での脚伸展筋力の測定方法の提示と検討を行っている4,5).
健常者において四肢の筋力を測定する場合,左側または右側の片側の四肢筋力を測定することが多い.左右どちらかの筋力の測定値から,対側または両側の筋力を推測したり,その筋力が上肢,下肢の代表的な被検者自身の筋力の値として,臨床や研究などで使用されている.それは,健常者の最大等尺性膝伸展筋力において,左右差が認められない3,6)ことに起因していると思われるが,定説がある訳ではない.歩行を含めた人間の日常生活における下肢の動作は,片側の下肢を交互に使用する動作が一般的であるが,立ち上がり動作,移乗動作および物を持ち上げる動作など両側下肢を同時に使用する動作も多く認められる.現在まで,左側または右側で発揮される片側の下肢筋力が,両側同時に発揮される左右を合体させた下肢筋力との関係を基礎研究として調査した報告は認められず,同一動作下での両側下肢筋力と片側下肢筋力の関係を検討することは,興味のもたれるところである.
そこで本論文の目的は,脚伸展筋力が立位保持や歩行に必要な下肢筋力であるという仮説のもとに,等速性片側脚伸展筋力(以下,片側脚伸展筋力)と等速性両側脚伸展筋力(以下,両側脚伸展筋力)を測定し,測定された値から両側脚伸展筋力と片側脚伸展筋力の関係を比較検討することである.
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