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はじめに
競技復帰を目的とするアスレチックリハビリテーションの分野では,オープンキネティックチェイン(open kinetic chain;OKC)での訓練から可及的早期にクローズドキネティックチェイン(closed kineticchain;CKC)での訓練に移行することが推奨される1-4).これは,CKCでの訓練が固有受容感覚を刺激し,また筋出力の特性や関節運動が目的とする運動遂行課題に近く,運動学習効果がより期待される5-7)からである.
しかし一方で,下肢荷重位でのスクワットトレーニングでは,大腿四頭筋の収縮筋放電量が最大収縮時に比べて微小である8,9)ことの証明や,CKCトレーニングのみでは不十分であり大腿四頭筋に電気刺激を加味した集中的OKCトレーニングが必要である10)とする立場,下腿三頭筋の筋力増強効果を期待するにはOKCでの訓練が必要である11)との報告がある.
これまでの諸家の研究では,OKC訓練内での効果や筋収縮様式の相違による検討12-14),CKC内でのトレーニング効果の証明4)や筋収縮速度の相違による比較検討15),ならびに等運動性機器を用いたOKC筋力とスクワットなど別の様式や機器でのCKC筋力および能力との関連性の検討16-20)がなされてきた.ところが,訓練方法および機器の互換性の問題により,同一条件でOKC訓練とCKC訓練のトレーニング効果を比較検討した報告はない.
そこで今回我々は,同一機器,同一の訓練プロトコールを用い,OKCである等速性膝関節伸展運動とCKCである等速性片側脚伸展運動の筋力強化訓練を各々行った2群のトレーニング効果を,筋力と運動遂行能力の両面で比較検討した.本研究の目的は,①OKC訓練とCKC訓練とで量的な筋力増強効果に差があるか否か,また,質的にOKC筋力,CKC筋力に対する相互の波及効果があるか,②両筋力増強訓練はいずれがより運動遂行能力の向上に寄与するか,③運動遂行課題特性に対してそれぞれの筋力増強訓練法が特異性を有するか否か,を明らかにすることである.
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