- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
高度経済成長が終焉し,バブルの崩壊の後遺症が未だ癒えない.医療界では昭和51年の薬価の大幅引き下げ以来,病院経営冬の時代,病院経営のピンチと言われてきた.しかしその一方で,医療ビジネスは相対的にみて成長産業とも言われている.確かに経営的危機に瀕している医療機関が存在する反面,極めて順調な病院も存在している.ではこのような状況を引き起こす原因はどこにあるのだろうか.
平成7年度の国民総医療費は推定26兆7,000億円に達し,毎年1兆円以上の増加を示していることから,ある経営の専門家は27兆円産業を経営の素人である医師が担っていることは問題ではないかと指摘している.経営の専門家ならば,より効率的な医療の提供が可能であり,無駄が省けると指摘しているのである.医療に関しての経済問題が深刻化していることはまぎれもない事実である.しかし,経営の専門家が医療機関を経営すれば,広範な医療経済や医業経営の問題が解決できるとは考えにくい.なぜならば,わが国に数多くある会社立の病院の経営が必ずしも円滑でないからである.
国民医療費に関する諸問題は,先進国共通の問題である.昭和54年の臨時行政調査会は「国民医療費の伸び率を国民所得の伸び率の範囲内に留める」と答申し,これをうけて厚生省の医療費抑制政策(医療費適正化政策)が開始された.ほぼ2年ごとの診療報酬改定は,大幅な薬価の引き下げと出来高払い方式から包括化(いわゆるマルメ)へと変化している.しかし,ことリハビリテーションの部門で包括化が行われているのは,病院・診療所の老人デイケアと老人保健施設におけるOT,PTだけである.また平成6年の診療報酬改定では,ほとんど増加のなかつたリハビリテーション部門は,平成8年の改定で施設基準によっては平成4年以来の大幅引き上げが認められている.以下では,これらの目まぐるしい変化のなかでのリハビリテーション医療界の経済状況について,筆者のささやかな知見を述べてみたい.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.