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1970年代,わが国のリハビリテーション(以下,リハ)医療サービスの担い手は,いわゆる温泉病院を主体とするものであった.これはリハは温泉地で療養しながらするものという考えによるところもあったが,実際の理由はリハに対する診療報酬上の評価が低く,キャピタルコストや人件費の低い郡部でしか経営が成り立たなかったためである.専門的リハ医療サービスを受けるには,住み慣れた地域から遠く離れた場所に転院せねばならなかったのである.その後,30年が経過した現在,リハ医療サービスを提供する環境は格段の進歩を遂げた.提供方法も,入院リハ,外来リハ,通所リハ,訪問リハと多様化し,急性期,亜急性期(回復期),慢性期(維持期)など病状の時期に応じた提供体制も整備されつつある.特に画期的であったのは,2000年の診療報酬改定で制度化された「回復期リハビリテーション病棟」であろう.ここでは創設後5年を経た回復期リハ病棟の現状と課題について述べたい.
回復期リハビリテーション病棟の創設理由
1990年代に,発症早期・超早期から開始されるリハの重要性が強調された.しかし,先駆的な一部の急性期病院を除いて十分に実施されることは稀であった.一方,介護保険制度の準備期であった当時は,通所リハ(当時の老人デイ・ケア)および老人保健施設などにおける維持期リハの基盤整備の時期でもあった.この時期に厚生労働省老人保健課より「地域リハビリテーション支援活動マニュアル」が提示された.ここには「介護保険の自立支援,要介護状態の軽減・予防を図るためには,第一に寝たきり等の発生を可能な限り予防する予防的リハビリテーション,第二に障害が発症すれば早期に開始される急性期・回復期リハビリテーション,第三に寝たきり等の進行を阻止する維持期リハビリテーションを量的にも質的にも充実し,各地域毎に整備することが緊急かつ重大な課題」と明記され「地域リハビリテーション支援体制整備推進事業」が開始されたのである.以後,リハ医療サービスにおける課題は,急性期リハ,回復期リハ,維持期リハの基盤整備となった.
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