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Ⅰ.初めに
近年,障害者の地域在宅生活を促進するノーマライゼーションの考えかたが広まってきており,数年前は住む家の無い単身障害者は施設生活の選択を余儀無くされたが,現在は本人が望めば種々の援助を受けながら,地域社会で一人暮らしをすることが可能になってきている.しかし現実には,重度障害者の一人暮らしの実現は課題が多い.我が国の在宅福祉サービスは地域によりその整備に差が有り,東京都においても区市町村でバラツキが有り,十分整備されてはいない.特に巨大都市東京は人間関係が稀薄で,コミュニティーの崩壊が進んでおり,近隣の援助を期待できないため,公的な支援に頼らざるをえない.また,地価の高騰のため家賃の安いアパートは年々減少する一方,マンションへの立て替えが相次ぎ,年金や生活保護費で借りられる住居の確保が困難になっている.さらに障害者に対する偏見や差別は根強く残っており,単身障害者の一人暮らし援助にはこのような社会の受け入れ状況の中で現実の問題に直面し,その障壁を障害者とともにどこまで乗り越えられるかその困難度の数量化が望まれるが,単純に日常生活動作や家事動作を含むAPDLが自立すれば一人暮らしができるというわけにはいかない.近年,地域福祉,在宅ケアの充実が叫ばれているが,そのシステム作りは難題が多く,まだ一部の地域でしか進んでいない.脳卒中後遺症では片麻痺の他に知的能力の低下,失語症などのコミュニケーション能力の低下や高血圧,糖尿病など合併症をもつ障害者は多く,その一人暮らしには地域における密度の高い在宅支援サービスが要求される.このような単身脳卒中者に対する一人暮らしの援助は東京都心身障害者福祉センターでは理学療法士が他の職種と共同してソーシャルワークを含む援助を行なっている.ここでは一連の援助内容を説明し援助の実際を述べる.
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